天田川沿いを歩く
3月
ヤマトレンギョウに出会う道
2021.03.15
表紙絵 ヤマトレンギョウ
以前『野山の植物を楽しむ』会で教わって、当地点にオニグルミがあることは知っているので、この季節でも同定出来る。3月。改めて月々にオニグルミの変化を観察し楽しみたい。
この地点は、人がほとんど通らない橋の上で、縁の方には落葉が溜まり腐葉土となり、また苔むしてもいる所である。そこに見えるのは、ミツバベンケイソウの幼苗。きびしい冬を乗り越えて芽吹いている姿が輝いている。
春早くから咲く花のひとつで、スズシロソウの花に出会うとなんだか嬉しくなる。小さな花を垂らすように付ける姿も愛らしい。急傾斜地や崖などに生育し、花と同時に根元から匍匐枝を出し、広がって群落を形成するなど、戦略家でもあるようだ。
ウコギ科 キズタ属
常緑の蔓性木本。キズタに出会うと、「なんだかいつも同じ姿をしているな」という印象しか残らない。花期が10~11月で、自身の花行動も鈍くなるからだろうと思う。花は、五弁花の径1㎝(花弁は3㎜)と小さく、黄緑色をしていてあまり目立たないが、よく見ると趣のあるいい花だと思う。
花期は3~5月。スミレの仲間としては早くから咲きだすもののひとつ。➀花弁が波打ちすっきりとは開かない、➁花色は淡紫~白色、③葉の上に花が乗っかかるように付く、➃距はずんぐりしている、➄萼片は丸みがある、⑥托葉はほぼ全縁で毛が多い、等の特徴がある。こんなことを調べながら、編集作業もまた楽しんでいる。
スミレ科 スミレ属
この写真、托葉に鋸歯が見られてちょっと不安。
シロバナネコノメソウも春早くに咲く花で、出会うと嬉しい。ネコノメソウ属としては珍しい白く小さな花だが、群生することもあってよく目立つ。雄しべは8個で、暗紅色の葯がかわいい。葯は次第に暗黒色になり早くに落ちる。その時期になると少しがっかりすることもあるが、それはそれできれいだと思う。
茎は短くて横に這い、多数の細かい根を出して樹皮などに着生する。葉は茎から出て、全体に細長い単葉で、線形~長楕円形。先端は細まり、少しとがる。葉裏には胞子嚢があって円形の集団となって、葉裏の主脈の両側にそれぞれ一列に並ぶ。丸く盛り上がっている。廃屋となった屋根などに着生しているのを見ることがある。よく似たミヤマノキシノブがあって、区別するのは難しい。
ニシキギ科 ニシキギ属
若い枝や葉の裏面脈上に短立毛を密生することで,ツルマサキと区別するが、これもルーペの世界になってしまって、なかなか難しい。分布域が本州の中国地方と九州で石灰岩地に多いとされている。『野山の植物を楽しむ』会では、帝釈峡(神龍湖)の岩上で確認されているが、両者が同種かどうかは、ちょっと不安。
セリ科 シャク属
花期は5~6月なので、今花を見ることは出来ないが、この人参の葉のようなものが気になって一枚だけ撮影する。茎は直立して上部で分枝し、高さは80~140㎝になる。茎は互生し、長い柄があり、2回3出羽状複葉となり、小葉は細かく裂ける。これから同じセリ科等で似たものが出てきて、区別が難しく敬遠しがちになる。
手など届かぬ崖の上。「あの黄花。なんじゃ。」と遠望する。
岡山県西部と広島県東部の石灰岩地に自生する日本固有種。葉に先立って花を咲かせる。葉の裏に毛があるのが特徴。他のレンギョウに比べ開花時期が4~5月と遅く、花は小さめでまばらに咲く。(葉がすでに展開しているのが気になる。崖の上なので、葉の裏の観察など出来ない。)
005-天田3月-1 ヤマトレンギョウ.mp4 明治時代中期にヨーロッパから帰化した外来種。花期は3~5月だが暖地では真冬を除いて長期に咲く。道端、空き地、田畑等にふつう。畑作業をやっている自身にとっては、ホトケノザと共に『困った雑草』である。取っても取っても生えてくる。
花期は3~ 9月。あたたかい所では年中。枝先に集散花序を出して小さな花を次々と咲かせる。
花弁は5枚で白色。花径は6~7㎜。各花弁は基部近くまで深く2裂して、10枚のように見える。雄しべは1~7本、花柱は3個。萼片は腺毛が生えて目立つ。
当地この箇所はやや乾き気味な状態だからか、全体に小さめで勢いがないように感じる。
花弁も大きくふっくらしている。見た目から異なる。む
必ずと言っていいほど、斜面や崖のような所に生育する。
葉は7〜10個の小葉があり、頂小葉は少し大きい。側小葉は狭長楕円形〜倒卵形、幅1〜6㎜。
地下の根茎はワサビより細く短い。花期は3~5月。茎の先端に短くまばらな花序を付ける。花は白色の十字状の4弁花で、花弁の長さは4~6㎜。萼片は楕円形。花柄の基部には葉が変化した苞が付き、やや深く切れ込む。
花弁は4枚。花は左右対称。色はコバルトブルーだが、まれに白花もある。花は太陽の光によって開閉し、1日で落花するが、2日目も開くものもある。
花の中心にある蜜でハチ、ハナアブ、チョウ等虫を誘う虫媒花。別名【ホシノヒトミ(星の瞳)】何かで目にした名前。この方がいいんじゃないかな。
オオイヌノフグリは、明治初年頃にヨーロッパから入ってきた外来種である。これとは別に、本州以南に生育する在来種のイヌノフグリがあるが、近年オオイヌノフグリに生育地を奪われたり、人間の開発行為の影響を受けたりして、その数が大幅に減少している。自身も牧野植物園で栽培されているものにしか出会ったことはない。
キク科 フキ属
雌雄異株。写真は、早春の花茎でフキノトウ(蕗の薹)と呼ばれるもの。山野に生える春の山菜としてよく知られる。この後、地下茎から多くの葉柄を立てて、一部が切れた円い大型の葉を付ける。この葉柄も食用にされる。
雄株の雄花は花粉を付けるので、花色はやや黄色がかった白色で、花茎は20㎝ほどで止まり、花を終えて褐色になって枯れる。雌株の雌花は花色が白っぽく、受粉後は花茎を高さ40~70㎝まで伸ばして、白い綿毛(冠毛)をつけた果実(種子)を風に乗せて飛ばす。写真は雄花と思われる。
花期は4~5月。総状花序に5~10個の花を付ける。小花柄の基部の苞は菱状卵形で先が3~5裂しており、近縁種の苞が全縁となるので区別できる。
花冠は一方が唇形のように開き、その反対側がまっすぐに伸びるかやや湾曲した長い筒型の距となり、長さは15~25mmになる。花冠は青紫~赤紫色になる。
キンポウゲ科 イチリンソウ属
この時期でもイチリンソウとは認識できるが、蕾もまだ確認できない。
葉は対生、革質で光沢があり、形は楕円~卵状長楕円形。縁には先が鋭い刺となった鋭鋸歯がある。葉色は濃緑色。若樹のうちは葉の棘が多いが、老木になると葉の刺は次第に少なくなり、縁は丸くなって先端だけに棘を持つようになる。魔除けのためとして、庭等に植えられることがある。自生のものもまれに見ることがある。写真はいずれも幼木。
ムラサキ科 ルリソウ属
山地の木陰等に生える。草丈は20㎝で、茎は多数が斜上する。花序は分枝せず長さ2~7㎝の総状花序になり、多数の花を付ける。花冠は径1㎝で、淡青紫色。花柄は花期には長さ2~10㎜で、花後には花柄は垂れ下がり、長さ8~17㎜になる。萼も長さ5~8㎜になる。
セリ科 セントウソウ属
全国。山野の林内や林縁に生える。高さは10〜25㎝と小さい。葉は1〜3回3出羽状複葉で、紫色を帯びた長い柄があり、ほとんどが根生する。小葉はさまざまな形がある。花期は3~5月。葉の間から伸びた細い花茎の先に複散形花序をだし、白色の小さな花を付ける。見落としやすい植物である。
花期は3~4月。早春から咲く。花序は径2~3㎝で6~10個の花を密に付ける。花は径4~5㎜、4枚の萼列片は淡緑色で、倒卵形で平開し、長さ1㎜、花後に直立する。雄しべは4~8個あってごく短く、裂開前の葯は黄色い。葉は互生する。
クスノキ科 クロモジ属
秋に葉は枯れても落葉せず、春(3~4月)まで枝に残ので、この時期には分かりやすい。花期は4月で淡黄色の小さな花を付けるが、あまり目立たない。自身も現時点で花を撮影した記憶がない。
株は大きく高さ30㎝以上になる。根元から匍匐茎を出す。花穂は3月末頃から多数が出る。穂は葉より高くは伸びず、葉の間から姿を見せる。先端には褐色で細長い紡錘形の雄小穂が付く。それより下の花茎からは数個の雌小穂が出る。雌小穂は細長い棒状で、下の方のものにははっきりした柄があり、いずれも上を向いてやや立つ。
バラ科 キイチゴ属
茎や枝には細かい刺がまばらにある。葉は互生。長さ10~18㎝の奇数羽状複葉で、小葉は1〜2対。頂小葉は長さ3〜7㎝の卵〜卵状長楕円形。花期は4~5月。径4㎝の白い花が咲く。果実は集合果で径1cmの球形。5〜6月に赤く熟す。
ツルボラン科 ワスレグサ属
ススキノ科 ⇔ ツルボラン科
林内や渓流沿いに多い。春早くに咲き、セツブンソウと共に待ち遠しい花のひとつである。花期は3月。花弁のように見えるのは萼片で、8~12枚ある。薄い紫色を帯びる。
005-天田3月-3 ユキワリイチゲ.mp4 花期は3~4月。雌雄異株。葉に先立って咲く。春まだ葉がほとんど芽吹いていない林内では、その黄色の花がよく目立つ。
3~5個の花が集まってつく散形花序をつくる。雄花・雌花とも花被片は6個。雄花に雄しべが9個、雌花に雌しべが1個つく。
写真は雄しべが目立ち、雄株と思われる。花は同時期に咲く同科のダンコウバイに似るが、花柄がつくので区別することができる。
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