早池峰山で出会った植物
ハヤチネウスユキソウに会いたい
2013.07.14
表紙絵 濃霧の中 〝ハヤチネウスユキソウ〟
早池峰山には、約200種類の高山植物が生育し、種類の豊富さ、量ともに国内有数であることに加え、固有品種が多いことでも有名である。なかでもハヤチネウスユキソウは、早池峰を代表する花として有名で、アルプスに咲くエーデルワイスに良く似ている。色とりどりの可憐な花々は登山者たちを魅了してやまない。
北海道、本州、四国に分布し、深山の樹林下特に針葉樹林内などのやや薄暗い場所に自生する。高さは1mになり、茎には針状の刺が密生する。(見るからに刺々しく、かつ痛々しい感じ)葉は茎に互生し、径30~40㎝の掌状になり、葉柄にも葉脈にも刺が付く。花期は6~7月で、緑白色の目立たない小さな花を多数付ける。果実は6~7㎜の楕円形で、円錐花序に固まって付く。秋には赤く熟す。(これもまた毒々しい感じがして近寄りがたい)。
本州に広く分布し、山地や高原の日当たりの良い草地に生育する。茎は円形で直立し株立ちになり、高さは80~130㎝になる。葉は4~8枚が輪生し、単葉で長さ5~18㎝、幅2~5㎝になり、形は長楕円状披針形で先端がとがり、基部にはごく短い柄があるか無柄で、縁には多くの鋸歯がある。花期は7~8月。茎の先端に穂状になる長い総状花序を付け、淡紫色の多くの花を付ける。花序は長さ10~25㎝になり、花序軸には短い毛が散生する。花冠は長さ5~6㎜になり、先端は4浅裂し、裂片の先端はややとがる。雄しべは2本あり、花冠から長く突き出る。果実は蒴果で長さ2.5㎜の卵形になる。茎に輪生する葉が層になって付くので、九蓋草、九階草の名がある。
北海道、本州中部以北に分布し、山地~高山帯の草地に生育する。茎は緑色。直立し太く中空で、径0.5-1.5㎝、高さは1.5mになる。葉はやわらかく長さ10~30㎝になり、1~3回3出羽状複葉で、小葉や終裂片は羽状に中裂し先端が尖る。根出葉と下部の葉には長い葉柄がある。花期は7~8月。茎頂と分枝した先端に大型の複散形花序を付け、10数個の小散形花序を付ける。小散形花序には20数個の、径3㎜になる小さな白色の5弁花が付く。複散形花序の下にある総苞片は羽状に切れ込むことが多く、小散形花序の下にある小総苞片は線形で、総苞片、小総苞片ともに垂れ下がる。
セリ科 オオカサモチ属
果実は長さ6~7㎜の長楕円形で2個の分果からなる。分果はほぼ球形で狭い3翼がある。
ガクウラジロヨウラクは、ウラジロヨウラクの変種。北海道~本州中部地方以北に分布、山地~亜高山帯に生育する。ウラジロヨウラクとの違いは萼が長いこと。また、ウラジロヨウラクは太平洋側に多く分布し、ガクウラジロヨウラクは日本海側に多く分布している。
高さは1~2m。葉の裏は緑白色をしている。花期は5~7月。花は白っぽい淡紅色で壷型をしており下垂して付く。長さは11~14㎜。先端が浅く5裂し外側へ反っている。名は、花の様子が仏像が身につけている装身具(瓔珞)に似て、葉の裏が白いことによる。
北海道、本州中部地方以北に分布し、高山の日当たりの良い草地、岩礫地、砂礫地などに生育する。茎は直立し上部は分枝し、高さは10~40㎝になる。根出葉と下部の葉には長い葉柄があり、葉は2~3回羽状複葉になり、小葉は不ぞろいで破片はさらに裂け、葉先や羽片の先はやや鈍頭(ニンジンの葉に似ている)。しかし、裂片の幅は1~5㎜と変異が大きい。茎につく葉は互生し、葉柄の基部が赤みを帯びた鞘状に膨らむ。花期は7~9月。茎頂か、分枝した先端に小型の複散形花序を付ける。花は径2~3㎜と小さく、白色の5弁花を多数付ける。花弁は内側に曲がる。雄しべは5個。花柱は短く1㎜以下。複散形花序の下にある総苞片は線形で1~2個、小花序の下にある小総苞片は線形で数個ある。果実はやや扁平で、卵~長楕円形になる。名は、日光白根山で最初に採集されたことによる。
北海道、本州中部地方以北に分布し、亜高山~高山帯の湿った草地に生育する。茎は直立し中空で、高さは30~90㎝になり、上部は単一または分枝する。葉は1~2回3出羽状複葉または単羽状になる。小葉は広披針形~広卵形で縁にあらい鋸歯があり、不規則に浅裂し形に変化が多い(変異が大きい)。側小葉に柄はない。葉柄の基部が鞘状に膨らんで茎を抱く。花期は7~9月。茎頂か、分枝した先端に径2.5~5㎝の複散形花序を付け、10~10数個の小花序を付ける。花は径2~3㎜の白色の5弁花で、内側に曲がる。複散形花序の下にある総苞片、小花序の下にある小総苞片ともに、ふつうは無い。果実は長楕円形の扁平で、長さ7~8㎜、幅3~4㎜になる。(セリ科の花は見分けが難しくて敬遠したくなる。そのためか、写真もこれ一枚)
北海道、本州、九州に分布。(四国に分布しないのが不思議) 日当たりのよい岩地に生育する。茎は細く地表を這いよく分枝する。枝には短い毛があり直立して高さは3~15㎝になる。葉は茎に対生する。葉身は卵~狭卵形で先端は鈍頭、長さ5~10㎜、幅3~6㎜になり、全縁になる。全体に芳香がある。花期は6~8月。枝の先端に短い花穂を付ける。花冠は紅紫色の唇形で、上唇はわずかに2裂して直立し、下唇は3裂して開出する。萼は筒状鐘形の唇形となる。雄しべは4本ある。
シソ科 イブキジャコウソウ属
果実分果となりやや扁平となる。名は伊吹山に多産し芳香があることによる。
本州中部地方、大峰山に分布。日本固有種。高山の岩場や草地、ハイマツ林の脇など(湿った礫地や雪田周辺)に生育する多年草。低山~亜高山に分布するイワカガミの高山型。葉は長い柄があって数個が全て根生し、径1.2~3.5㎝の円~広卵形で縁に浅い波状の鋸歯がふつう片側8個ある。先は円いかややへこみ、基部は切形または浅い心形。厚い革質で表面に強い光沢がある。花期は6~8月。花茎の先に長さ1.5~2㎝、径1㎝の紅紫色で筒状漏斗形の花を総状に1~5個付ける。花冠の先は5中裂し、裂片はさらに細かく線形に裂ける。花筒の内側には細毛が生える。雄しべは5個、仮雄しべが5個ある。萼は5裂し、萼片は長さ1.5~2㎜。果実は径3㎜ほどの球形の蒴果で、上向きに付く。種子は長さ0.5㎜の楕円形で両端に突起状の翼がある。
イワウメ科 イワカガミ属
イワカガミの仲間は低山から高山まで幅広く見られ、生える地域によっても少しずつ形態が違い区別はつけにくい。イワカガミとコイワカガミを区別しない見解もあるが、生育環境は大きく異なる。コイワカガミの母種であるイワカガミは、やや大型で、鋸歯は明瞭でコイワカガミより多く十数個ある。
北海道、本州中部以北、四国山地、屋久島の亜高山帯~高山帯の湿った草地や沢沿いの林縁などに生育する。高さは5~20㎝、高山帯では10㎝のものが多い。花期は6~8月。径1.5~2㎝の花弁は黄色で、花を一つ付ける。唇弁は大きく褐紫色の筋が入り、上弁と側弁がそり返る。花柱はY字形で無毛。葉は2~4㎝の腎円形ないし腎心形で、柔らかく短毛があり光沢が無い。縁は波状の鋸葉である。
スミレ科 スミレ属
名は、黄色の花で葉の形状が馬の蹄(駒の爪)に似ていることによる。
北海道~本州中部地方以北に分布する高山植物。根は太くてまっすぐに下に伸びる。葉は根出状に数枚出る。それぞれ2回3出複葉で、1回目の葉柄ははっきり出るが2回目はごく短く、小葉は互生して集まる。小葉は扇形、薄くて淡緑色、表面は粉を吹いたようになる。茎は高さ10~25㎝。花期は6~8月で先端に数輪の花をうつむき加減に付ける。花は青紫色、萼片は広卵形で傘状に開き、花弁は円筒形にまとまって付き、先端はやや白っぽく、基部からは萼の間を抜けて距がのびる。
果実は袋果で、5本の先のとがった筒を束ねたような姿で上を向く。多くの県で絶滅危惧種(類)に指定されている。反面、園芸品種として改良されたものが山野草として栽培されている現実もある。基本標本は、礼文島と利尻島のもので、礼文島では民家の近くでも自生している。(自身も礼文島に行った時、まさに民家の玄関先で咲いているのを見て驚いたことがある)また、田中澄江が『新・花の百名山』の著書で早池峰山を代表する花の一つとして紹介している。
キンポウゲ科 オダマキ属
名は、深山に咲き、苧環(おだまき)という紡いだカラムシ(苧)や麻糸を丸く巻く道具が花の形に似ていていることによる。
一様にミヤマオダマキといっても生育地によって花色の濃淡などが異なり、本当に同種なのかと思うほどである。
ヤマブキショウマの変種で、早池峰山にのみ分布し、高山帯の蛇紋岩地の岩礫地に生育する固有種。(一見ヤマブキショウマと思ったが、ずい分小さく感じた)草丈は25~50㎝の多年草。根茎は太く分岐する。葉は暗緑色でやや光沢があり、裏表面とも無毛で、先端は母種のヤマブキショウマとは異なり、尾状に伸長しない。花期は7~8月。白色の花を多数付け、小花柄は果時にも直立し、垂れることはない。袋果が上を向く。雌雄異株。
幹の高さは50~100㎝。よく分枝し、こんもりと丸まった樹形になる。若い枝は赤褐色になり、無毛か白軟毛がある。葉は、長さ1~3㎜の葉柄をもって枝に互生し、形は倒卵~広倒卵形または卵円形。葉の先端は円頭または鈍頭で、基部は円形または広いくさび形で葉柄に流れる。葉身の長さ1.5~6㎝、幅1~4㎝。ほとんど両面無毛で、縁には重鋸歯があり、裏面は淡緑色となる。葉の形から「マルバ」の名がある。花期は6~8月。枝の先に複散房状に花序をつくり、径5~8㎜の白色の5弁花を多数咲かせる。花弁の長さ1.5㎜。雄しべは長く伸び、長さ7~10㎜になる。
バラ科 シモツケ属
北海道、本州中部以北に分布し、亜高山から高山の日当たりのよい岩礫地に生育する。
北海道~関東、中部地方の亜高山帯~高山帯に生える高山植物。蔓(茎)の長さは30~100㎝で、紫色を帯びる。葉は対生する2回3出複葉、小葉は長さ1.7~8㎝、幅0.6~4㎝の披針形で先がとがり、縁に粗い鋸歯がある。葉の表面は葉脈がへこみ、長さ3~7㎝の葉柄を持つ。花期は6~8月。今年伸びた枝先に3㎝の鐘形で紫~紅・赤紫色の花を下向きに咲かせる。
萼片は4枚で内側に白い花弁がある。萼片は長さ2~3.5cm、幅0.6~2cmの楕円形~狭卵形で、先は尾状にとがり、縁に白い毛が密にはえる。果実は長さ3~4㎜の痩果で、果実には雌しべの花柱が長く伸びて残り、毛を密生させて羽毛状になる。
キンポウゲ科 センニンソウ属
名は、深山に生え、花の形が火事の時に鳴らす半鐘に似ていることによる。
北海道、本州中部地方以北に分布。高山帯の湿り気のある所に生える。草丈は10~40㎝。葉は5~15㎝の長楕円形で、3~6枚が互生し、基部は茎を抱く。花期は6~8月で、茎の先端に総状花序の赤紫色の花を多数(10輪ほど)付ける。まれに白花の個体もある。花冠は唇形であり、先端が3裂している。花の左右に羽を広げたように見えるのは側萼片とよばれる部分である。 花の上部では上萼片と側花弁が合わさって帽子のように見える。
ラン科 ハクサンチドリ属
名は、白山に多く生育し、花の付き方が千鳥の飛ぶ姿に似ていることによる
北海道の夕張山地、日高山脈北部、本州の北上山地(早池峰山)に分布し、高山帯の超塩基性岩の崩壊地や岩礫地に生育する。希少種。日本固有種。全草に星状毛がある。茎は下部で分枝して株状になり、花の付く茎の高さは5~10㎝になり、花の付かない茎はやや伸びる。茎につく葉は無柄で、長さ4~15㎜、幅2~6㎜の広倒披針形になり、先端は鋭形、全縁または鋸歯があり、両面と縁に星状毛、2分岐毛、単純毛が生える。花期は6~8月。茎の先端に総状花序を出し、黄色の花を数個~10数個付ける。花柄は花序から斜めに出て、花柄には毛がある。花は黄色の4弁花で、花弁は長さ4.5~5㎜の広倒卵形で先端はへこむ。萼片は4個あり、楕円形で花弁より短い。雄しべは6個あり、うち4個が長い。雌しべは1個で花柱の長さは0.2~0.5㎜。
アブラナ科 イヌナズナ属
花序は結実の頃伸びて、扁平で長さ3.5~6㎜の楕円形から倒卵状楕円形の短角果を付ける。
北海道、本州中部地方以北。アオヤギソウの高山型で、亜高山~高山のやや乾いた草地や礫地に生え、高さ20~60㎝になる。草丈が低く苞が花序より突出するものが、タカネアオヤギソウとさる。花期は7~8月。茎頂の円錐花序に、径1㎝の花を多数付ける。雄花と両性花が付く。
葉は線状披針形。花茎の上部に6弁花をややまばらに付ける。茎の基部にシュロ毛状の枯れ葉の繊維が残る。
落葉小低木の高山植物。北海道 本州中部地方以北に分布する。高山の雪渓周辺の多湿地に生える。高さは10㎝。枝は地面を這い群落を作る。葉は羽状複葉。花期は6~8月。花茎の先に3㎝の白い五弁花を1つ咲かせ、多数の黄色い雌しべと雄しべがある。花後、花柱は伸びて放射状に広がる。果実は痩果。名のチングルマは、この実の形が子供の風車に見えたことから稚児車(ちごくるま)から転じて付けられた。写真は、花でなく実。花が終わった後のおしべが長く伸び、霧に含まれる水分で、羽毛のような実にいっぱい水滴を付けている。風に舞う姿も趣がある。
北海道、本州中部以北に分布。亜高山~高山帯の砂礫地、草地に生育する高山植物。草丈は10~20㎝で直立し、茎には多くの毛がある。葉は3小葉で、小葉は倒卵形で1.5~2.5㎝ほど。表面には光沢があり、縁には浅く鋭い鋸歯も確認がでる。小葉の縁に多少毛がある。花期は6~8月。茎頂に径1.5~2㎝の黄色い花を1~2個咲かせる。花弁は広倒卵形で5枚、花弁の先端が少し凹んでいる点が特徴。(ハート形)萼片は狭卵形で、萼や花柄などにも毛が確認でる。雄しべと雌しべはそれぞれ20個ほどある。
バラ科 キジムシロ属
名は、高山に咲く金梅と言う意味で、花の色が黄色で形が梅の花に似ているということによる。
日本固有種。本州の岩手県早池峰山の特産種。高山帯の蛇紋岩地の日当たりのよい礫地に生育する多年草。全体に無毛。地下の根茎は太い。根出葉は数個付く。葉柄があり、葉身は長さ3~8㎝、幅1.5~3.5㎝になる卵状楕円形で、先端は鈍形、基部は浅い心形から円形になる。
葉質は厚く、表面は深緑色で光沢があり、裏面は緑白色を帯びる。茎は根出葉の間から直立し、高さ15~30㎝になり、茎には2~3個の小さな葉が互生する。花期は7~8月。茎先に総状花序を1個付け、花穂は円柱形で長さ1~3㎝、淡紅色の花を密に付ける。花に花弁はなく、萼が花冠状に深く5裂し、萼片は卵状楕円形で長さ3~4㎜になる。雄しべは8個あり、花糸は糸状で細く、葯は小さい。子房の先に花柱が3個付き、糸状になる。
タデ科 イブキトラノオ属
果実は痩果で3稜をもつ長さ3㎜の楕円形になり、黒褐色で光沢がある。
本州の関東北部、中部地方以北に分布し、亜高山~高山帯の岩場や礫地に生育する。ウスユキソウの高山型変種とされていてるが、変異は連続的で区別できないとする説もある。草丈は10~15㎝と全体に小型で茎は叢生する。葉は長さ2~4㎝、幅0.5~1㎝の披針~長楕円形。葉の両面に綿毛が生える。包葉は茎葉よりやや小さく、長さが不揃いで星形に付く。頂部に小さな頭花を数個を付ける。頭花は球形に近く、花柄がなくあってもごく短い。花は筒状花のみ、花冠は白色、先が5裂する。総苞は長さ約4㎜の球状鐘形。痩果は長さ1.5㎜、冠毛がある。
北海道、中部地方以北の高山帯の乾いた礫地や草地に生える高山植物(多年草)で、全体に軟毛がある。アズマギクの亜種。草丈は10~20㎝。根際に長いへら形の葉が多数付き、茎にも小さい葉が付く。
花期は、6〜8月。茎の先端に径2.5~3㎝の頭花を1つ咲かせる。花は、帯紫赤色の舌状花と黄色の筒状花からなる。
北海道、本州東北地方北部の早池峰山、八幡平茶臼岳・八幡平源太ヶ岳に分布し、高山帯の岩石地、砂礫地や乾いた草地に生育する。地下茎を垂直に長く太く伸ばす。走出枝は出さない。茎は分枝しないで高さ20~50㎝になる。初め茎に黄褐色の長軟毛があるが、花時には毛は薄くなる。根出葉は長さ3.5~7㎝になる葉柄があり、葉身は長さ2.5~5㎝、幅3.5~4㎝になり、2回羽状深裂する。初め葉の両面に白~褐色の長軟毛が生えるが、後に落ちる。茎に付く葉は葉柄をもって互生し、1~2回羽状深裂し、茎の上部にいくにしたがって小さくなる。
キク科 ヨモギ属
花期は7~9月。花は花茎の先に総状花序に付き、黄色の頭花を10個ほどやや下向きに付ける。花柄は長さ1~12㎜。頭花は径7~10㎜の半球形で、総苞片は3列。頭花は舌状花がなく筒状花のみで構成される。
北海道、中部地方以北の高山帯に生育する。シオガマギクの仲間では最もよく見られる種である。同属のミヤマシオガマが岩場などに生えるのに対し、ヨツバシオガマは湿地帯に生える。高さは20~50㎝。名前の由来のとおり、シダのような葉が茎の節ごとに4つずつ輪生する。花期は6~8月で、薄紫色の太くて短い花弁が数段に重なり輪生する。
本州、四国、九州に分布。主に高山の林縁の湿った場所や渓谷沿いなどに生育する。高さ10~80㎝の多年草。紡錘状に肥大する根をもち、しばしば匐枝を出す。茎はときに上部で枝分かれし、ふつう無毛だがまれに開出毛がはえる。葉には根出葉と茎葉があり、根出葉はふつう開花期にも1~2個あって、2~3回3出複葉となり、長い葉柄を持つ。小葉は卵~卵状菱形で粗い鋸歯がある。茎に付く葉は互生し、1~2回3出複葉。(茎の上部では単葉となることもある)葉柄と小葉柄の基部に托葉はない。花期は5~8月。茎先の散房花序に多数の花を付ける。花には花弁はなく、花弁状の萼片も、開花後の早い時期に落ちる。
キンポウゲ科 カラマツソウ属
先が太くなる棍棒状の白い雄しべが多数あってよく目立つ。果実は三日月形の痩果で、3稜があり、柄があって開出する。
日本固有種。北海道、本州中部地方以北に分布し、高山帯の岩場や砂礫地などに生育する。小型の多年草。茎は株状になり、よく枝を分け、高さは4~13㎝になる。花のつかない枝は、長さ5~20㎜になる。葉は針形、長さ5~7㎜で先端は針状にとがる。花の付く枝は直立し、上部に短毛と腺毛がある。花の付く枝に付く葉は2~3対が無柄で対生し、葉身は花の付かない枝のものより小さい。花期は7~8月。花は径5㎜で茎先に2出集散花序を付ける。花柄には腺毛が密生する。萼は離生し萼片は5個、裂片は卵形から広披針形で長さ3㎜、3脈があり短毛があり先端は鋭形。花弁は5個で白色。倒卵~楕円形になり、萼片とほぼ同じ長さで全縁。雄しべは10個。雌しべは3個。
ナデシコ科 タカネツメクサ属
果実はは朔果で、長楕円形の長さ4㎜になり3裂する。種子は腎円形で、長さ0.6~0.7㎜になり、種子の突起は目立たない。
日本固有種。北海道、関東地方北部以北に分布。高山の礫地(風衝帯)に生える高山植物。雌雄異株。草丈は7~0㎝、茎は多数立ち上がり、葉は1~4㎝の倒披針~線状披針形、先は鋭頭~鈍頭、縁の2/3程度に鋸歯があり、無柄。花期は7~8月。花は茎頂に密な散房状に付き、4~5数性、花弁は線~長楕円形で雄花は3~4㎜で雄しべは更に長い。雌花は2~3㎜で萼より短い。裂開前の葯は濃い黄色~橙色。
ベンケイソウ科 イワベンケイ属
名は、近縁種のイワベンケイよりも葉が細長いことによる。
岩手県早池峰山特産(固有種)で、山頂部の蛇紋岩地の礫地にだけ生える。大型で茎は叢生し、高さは10~30㎝になり、分枝しないで、白い綿毛がある。根出葉は線状倒披針形で、長さ3~8㎝になり、両面に白毛がある。茎につく葉は7~10個が互生し、線状披針形で先端がとがり、長さ3~5㎝、幅4~6㎜になり、基部は細くなり茎を抱く。表面の綿毛は少なく緑色で、裏面は灰白色の綿毛が密生する。
花期は7~8月。頭花は4~8個あり、総苞は径7~9㎜。頭花の縁に星状につく苞葉は5~15個あり、径4~6㎝になり、灰白色の綿毛が密生し、先端はとがる。アルプスに咲くエーデルワイスに一番よく似ていると言われている。
北海道、本州中部以北に分布し、山地から亜高山の草地や湿地の比較的湿気の多いところに生える。山地の草本の中では大型で、高さは1mになる。花期は6~8月。穂の先に白い花をつける。花茎の先端部は両性花、横に伸びる花は雄花である。群生することが多く、初夏の山を代表する花の一つ。光沢があり、硬く葉脈がはっきりとした長楕円形の葉が互生する。
メランチュウム科 シュロソウ属
名は、花が梅に似て、葉が蕙蘭に似ていることによる。
北海道、中部地方以北の高山帯の砂礫地や乾いた草地に生える。高さは5~15㎝。シダのような葉は、同属のヨツバシオガマやタカネシオガマに似るが、小葉が更に細かく切れ込んでいること、草丈が低いことで区別できる。花期は7~8月。他の高山植物と比べ開花の時期が早い。茎の先端に長さ2~3㎝の唇形で鮮やかな紅紫色の花を10個ほど固まって付ける。
北海道、本州、四国の亜高山帯から一部はハイマツ帯まで分布する。樹高は、亜高山帯では3mほどにもなるが、ハイマツ帯では環境が厳しいため50㎝にも満たない場合がある。花は白から淡い紅色で、内側に薄い緑色の斑点がある。亜高山帯の暗い針葉樹林内を彩る代表的な花である。
登山時の記録(メモのようなもの)によれば、写真を掲載したもの以外にも、〝オオカメノキ〟〝カニコウモリ〟〝ギンリョウソウ〟〝ネバリノギラン〟〝ミツバオウレン〟にも出会っているはずだが、パソコン内外のメモリーから、当地で撮影したであろう写真が見つからないし、出会ったかどうかの記憶も曖昧な状態になっている。もう8、9年も前のことだから仕方がないのかもしれない。もし運よく見つかるようなことがあったら追加掲載するとして、ひとまずここで、蔵出し編集『早池峰山 ハヤチネウスユキソウに会いたい』の編集を終える。 2020.01.22